令和2年度は、今年に入って拡大してきた新型コロナウイルスについての情報や感染拡大防止の様々な対応をめぐり、落ち着かないまま新年度を迎えることとなった。厚生労働省からの通達に従い、高齢者介護施設は厳重な感染対策を講じているところであるが、感染の拡大が社会全体に大きな影響を及ぼす事態となっており、冷静かつ適正な判断と対応をとらなければならない。
さて、3年毎に行われる介護報酬の改定については、平成30年度の改定において6年ぶりのプラス改定となったが、令和3年度の報酬改定ではマイナス改定が予想される。令和2年度は制度改正及び介護報酬改定の内容が明らかにされていくこととなるので、正確な情報を入手し、その対応を見極めていかなければならない。
介護サービス事業所が次々と開設される流れは収まりつつあるが、利用稼働率の低下など事業運営に支障を及ぼすことのないよう、引き続き重度化・複雑化する多様なニーズに柔軟に対応できるよう介護サービスの質の向上に努めていかなければならない。
介護職員の人材不足については、依然深刻さが増すばかりとなっている。昨年10月の消費税率の引き上げに伴い、介護職員等特定処遇改善加算が設置され介護職員以外の職種もその支給対象となったが、未だに人材不足が解消される様子はうかがえない。「介護」という仕事が重労働で低賃金というイメージが根深く、介護現場での人手不足は慢性化していることが現状である。国は、そのイメージを払拭するため、業務の効率化をすすめるためのICT(情報通信技術)や介護ロボットの推進など、職場環境の改善が進んでいるということをアピールはされているものの、費用負担が大きい割には手軽に使用できるとはいえず、導入に至るには厳しい状況である。
また、「働き方改革」が進められ、介護の業界でもワークライフバランスが重要であるとの認識が高まっている。当法人でも職員にとって働きやすい職場環境の検討を進め、給与規程及び就業規則を整備し、採用から定年まで長く安心して働くことができる法人を目指し、努力しているところである。
これまで、社会福祉法の改正に伴い経営組織のガバナンスの強化に努めるほか、業務執行に必要な組織を定め、その業務分担を明確にし、施設業務の適正かつ効率的運営を図るため、新たに組織規程を設け、さらに処務規程の見直しも行ったところである。職員一人ひとりが自覚をもって規律を遵守し業務に励まなければならない。
今後も、社会福祉法人としての役割・存在意義を示していくためにも、雨晴苑・氷見苑・ケアハウス氷見の3施設がそれぞれの特徴を活かしつつ、施設と職員が一体となり協調・切磋琢磨し、働く職員からは満足感が溢れ、支えを必要としている方には自然と手を差し伸べることができる職員育成・法人運営に努めなければならない。加えて、去る2月1日から氷見苑、ケアハウス氷見の食事提供を永寿会直営で行っているところである。栄養管理された食事の提供は利用者の健康維持・増進を担うものであり、食という生命維持の部分を担う業務に従事することに責任と誇りをもって安全、安心で美味しい食事の提供に努めなければならない。今後、さらに食を通じて利用者から信頼され、愛される施設となるよう、精進を重ねていく必要がある。
そして今まで以上に「専門性に裏付けられた、良質な介護サービスが、安定的かつ継続的に提供できる体制づくり」に、積極的に取り組んでいく必要がある。
(1)「専門性に裏付けられた」とは、介護福祉士や看護士、機能訓練士・管理栄養士など専門的
な知識、技術を修得した専門職員が、介護サービスの大宗を担っていける体制づくりであ
る。
(2)「良質な介護サービス」とは、利用者の尊厳を保持し、利用者個人のニーズを尊重し、ケア
プランに沿った手厚い介護を実践することにより、安全で快適な日常生活を支援することで
ある。
(3)「安定的かつ継続的に提供できる」とは、多職種の専門職員が相互に連携・協力しつつ、強
固なチームケアを実践していくことである。
また、「処遇改善加算」の要件とされる「キャリアパス」は、賃金改善以外に職場環境の向上や福利厚生などにより、処遇改善を図るとともに、教育・研修体系を充実・強化することなどにより、介護職員のキャリアアップとスキルアップを支援していくことを目的としたものであり、着実に実施していくことが重要である。
いずれにしても、介護福祉事業はサービス業である以上、常に介護の質を高め、利用者・家族の満足度を高めていくことが最終目標であり、基本的方針として強く認識していくことが重要である。
さらに、社会福祉法人として、地域社会における福祉の充実・発展を使命とし、福祉情報を適宜提供するなど、地域福祉の拠点として、地域から愛され、信頼される存在として発展していかなければならない。